いのりのもり祈りの杜仮称

祝詞・岡吉胤『祝詞全書』1897年・第二文例

産土神例祭一例うぶすながみれいさいいちれい

土地の神への感謝、供物や神楽、里の暮らしと実りの安穏を祈る、産土神の例祭の文例です。前の「産土神例祭」とは別の一例です。祭神・土地・奉仕者・日付には原本の代入欄を残しました。朝廷・官人への祈りも含む歴史的な本文で、現在のすべての神社の祭り方を示すものではありません。

産土神の例祭を祝う(うぶすながみのれいさいをいわう)

是(これ)の何郡何(なにのこおりなに)の里(さと)は朝日(あさひ)の直刺(たださす)処(ところ)夕日(ゆうひ)の伊照(いてらす)処(ところ)の大宮柱太(おおみやばしらふと)しく立(た)て静宮(しづみや)に鎮(しづま)り給(たま)いて世々(よよ)此里(このさと)を領坐(うしはきま)す掛(か)けまくも畏(かしこ)き何大神(なにのおおかみ)の大前(おおまえ)に仕奉(つかえまつ)る神官何某(かむつかさなにがし)畏(かしこ)み畏(かしこ)みも白(もう)さく。

今(いま)いや明治何年何月何日(めいじなにとしなにつきなにのひ)は毎年(としごと)の御祭日(みまつりび)なるを以(もち)て三日(みか)の御祭(みまつり)仕奉(つかえまつ)るの氏子産子(うじこうぶこ)の輩(ともがら)は夙(と)くも其設(そのもうけ)を営(いとな)み。

御門鳥居(みかどとりい)及(およ)び大宮(おおみや)の回里(もとおり)に忌竹(いみだけ)を立(た)て真榊(まさかき)に由布取垂(ゆうとりし)で天大御縄小御縄(あめのおおみなわおみなわ)引亘(ひきわた)し千緒高緒立列(ちおたかおたてつら)ね奉(たてまつ)る幣帛(みてぐら)は明妙照妙和妙荒妙(あかるたえてるたえにぎたえあらたえ)の新磨(にいすり)の米(よね)以(もち)て炊(かし)ぎたる宇豆(うづ)の大御饌(おおみけ)歌(うた)い津(つ)つ舞(ま)い津(つ)つ。

天甜酒(あまのたむざけ)大野原(おおぬはら)に生出(おいいづ)る物(もの)は甘菜辛菜(あまなからな)青海原(あおうなはら)に生(お)る物(もの)は鰭(はた)の広鰭(ひろはた)の狭(さ)奥津海藻菜(おきつめ)辺津海藻菜(へつめ)時(とき)の菓(このみ)に至(いた)る祝(はふり)も繋(か)け置足(おきたら)わし。

天御神楽(あまみかぐら)八少女(やおとめ)の舞仕奉(まいつかえまつ)り又飾物(またかざりもの)を引出(ひきい)でて天鼓打笛吹謡(あまつづみうちふえふきうたい)て踊(おど)り享(まつ)る神慮(みこころ)を和(なご)め奉(まつ)らくを平(たいら)けく安(やす)けく所聞食受給(きこしめしうけたま)いて。

今(いま)も往前(ゆくさき)も天津日嗣(あまつひつぎ)の高御座(たかみくら)に顕津御神(あきつみかみ)の天下所知食(あめのしたしろしめ)す皇美麻命(すめみまのみこと)の大御世(おおみよ)を足永(たらなが)の御世(みよ)の堅磐(かきわ)に常磐(ときわ)に斎奉(いわいまつ)り国中(くぬち)には道速振(ちはやぶ)る荒振事(あらぶること)無(な)く山(やま)の奥島(おくしま)の岬(さき)に不落(おちず)令治坐給(をさめしめたま)い親王諸王諸臣等(みこおおきみまえつぎみたち)を始(はじ)め仕(つか)う仕(つか)える百官(もものつかさ)の人等(ひとら)を平(たいら)に安(やす)に守給(まもりたま)いて。

天皇我(すめらが)大朝廷(おおみかど)に茂(いかし)の八桑枝(やくわえ)の如(ごと)く立栄(たちさか)え令仕奉給(つかえまつらしめたま)い四方(よも)の国(くに)の蒼生等(あおひとくさら)が取作(つく)れる五穀(いつくさ)を始(はじ)め天草(あまくさ)の片葉(かきは)に至(いた)る作(つく)の作物(つくりもの)を悪風荒水(あしきかぜあらきみず)に不令会給(あわせしめたまわず)八束穂(やつかほ)の茂穂(いかしほ)に成幸給(なしさきわいたま)い。

大神(おおかみ)の敷坐(しきま)す此里(このさと)に生出(おいいづ)る氏子産子等(うじこうぶこら)を漏事(もるること)無(な)く堕事(おつること)無(な)く守給(まもりたま)い祐給(たすけたま)いて天神(あまつかみ)の枉事不令有(まがごとあらしめず)其持分(そのもちわけ)る家業(なりわい)をも勤(いそ)み結(はたら)きて弥向栄(いやむかえ)に立栄(たちさかえ)の繁(しげ)きはぶる地(ところ)となり幸給(さきわいたま)い。

此御社(このみやしろ)に仕奉(つかえまつ)る神司等(かむつかさら)我家内(わがやぬち)安(やす)く穏(おだい)に諸(もろもろ)の災(わざわい)は不萌(きざさ)ず前(さき)に遠(とお)く令避給(さけしめたま)いて夜(よ)の守(まもり)日(ひ)の守(まもり)に護(まも)り幸(さきわ)え給(たま)わんと祈(の)み白(もう)す事(こと)の由(よし)を平(たいら)けく安(やす)けく所聞食(きこしめ)し鶉成伊這回(うづらなすいはいもとお)り村雀(むらすずめ)宇須々岐利居(うすすぎりい)て畏(かしこ)み畏(かしこ)みも称辞竟奉(たたえごとおえまつ)らくと白(もう)す。

保護期間満了の古典本文を独自に組版。現代語訳と英訳はこの杜が作成。

出典・参考資料