いのりのもり祈りの杜仮称

祝詞・1911年刊・原本の読み

大国神甲子祝文だいこくじんきのえねのしゆくもん

1911年刊『神道太祓大全:神拝祝詞』から。原本の万葉仮名の助詞・送り仮名を読み下し、句読点と段落を補っています。歴史的仮名遣いと、この版の字句を残しています。

地津主大己貴神(くにつぬしおほなむちのかみ)、夫甲子(それきのへね)とは気(き)の栄(さか)ゆる根(ね)を云(い)ふ。根待(ねまち)は普(あまね)く地(ち)を祭(まつ)る事(こと)ぞ。地(ち)は則(すなはち)妻(つま)なれば、是(これ)を祭(まつ)る事(こと)を寝交血(ねまち)と云(い)ふ。然(しか)り心善(こゝろよく)子孫(しそん)を授(さづけ)老(おひ)て大国神(だいこくじん)の徳(とく)に叶(かな)ふ。謹美謹美(つゝしみつゝしみ)惶美惶美(おそれみおそれみ)申(まう)す。

古(いにしへ)、此国(このくに)荒芒(あらびたる)の世(よ)、磐根木(いはねこ)の立草(たちくさ)の片葉(かたは)も能強暴(よくあしかる)の時(とき)、天下(あめがした)を経(つくり)修治(をさめ)給(たま)ふは、国(くに)作(つく)り大己貴神(おほあなむちのかみ)と申(まう)す。

武(たけ)く強(つよ)き勢(いきほひ)に在(まし)ませば、葦原(あしはら)の醜男(しこを)と申(まう)し、天(あま)の広戈(ひろほこ)を振(ふりたて)て、邪鬼(あしきもの)を撥(はら)ひ平(む)け、語問(ことと)ひし木草(きくさ)の類(たぐひ)を摧伏(くだきふせ)給(たま)へば、八千戈(やちほこ)の神(かみ)と申(まう)す。諸(もろもろ)の不和順神等(まつろはぬかみたち)を和順(まつろへ)国(くに)を持給(もちたま)へば大国主神(おほくにぬしのかみ)と申(まう)す。

此神(このかみ)の住(すま)せ給(たま)へる宮(みや)は、千尋(ちひろ)の栲縄(たくなは)を以(もつ)て結(ゆひ)て百余八十結(ももあまりやそむすび)、木柱(はしら)は高久(たかく)、太久(ふとく)、板(いた)は広久(ひろく)、厚久(あつく)、高橋浮橋打橋鳥船(たかはしうきはしうちばしとりふね)、百余八十縫(ももあまりやそぬひ)の白楯(しらたて)有(あり)、又祭祝(またまつり)の主(つかさ)、諸(もろもろ)の司(つかさ)にして備(そなは)れば、大物主神(おほものぬしのかみ)と申(まう)す。

神光(あやしきひかり)海原(うなはら)に照(てら)し、幸魂奇魂(さきみたまくしみたま)を三諸山(みもろやま)に鎮(しづめ)給(たま)へば、大国玉神(おほくにたまのかみ)と申(まう)し、治世顕露(よををさむるあらは)の事(こと)を皇孫(すめみま)尊(みこと)に依之(よさし)奉(たてまつ)り、神事(かんごと)を治給(をさめたま)ふ、御身(おんみ)に瑞(みづ)の八坂瓊(やさかに)を被(かづ)き、寂然(しづかに)長隠給(ながくかくれたま)へば、顕国玉神(うつしくにたまのかみ)と申(まう)す。

顕見(うつしみ)蒼生及畜(あをひとくさおよびけもの)の為(ため)に其病(そのやまひ)を療(おさむ)る方(さま)を定(さだ)め、鳥獣昆虫(とりけだものはふむし)の災(わざはひ)を払(はら)はむ為(ため)に其禁厭(そのまじなひ)とる法(のり)を定(さだ)め給(たま)ふ。

是(これ)を以(もつ)て百姓(おほんたから)今(いま)に至(いた)るまで、皆恩頼(みなめぐみのふゆ)を蒙(かふむ)れりと称辞(たゝへごと)竟(をへ)奉(たてまつ)り、宇豆(うづ)の広前(ひろまへ)に、宇豆(うづ)の御膳(みけ)、宇豆(うづ)の御酒(みき)、宇豆(うづ)の御幣(みてくら)を、朝日(あさひ)の豊栄登(とよさかのぼり)に捧奉(さゝげたてまつ)る。

平(たひら)けく聞食(きこしめせ)と申(まう)す。宝祚(たからくらゐ)、天壌(あめつち)と窮無(きはまりな)く、百姓(おほんたから)安穏(やすくおだやか)に、某(それがし)姓名等(かしら)家内(いへのうち)諸(もろもろ)の災難(さいなん)なく、万(よろづ)の幸(さいはひ)給(たま)へと。夜(よ)の守(まも)り日(ひ)の守(まも)り、愚(おろか)なるは猶(なほ)も恵(めぐ)み幸給(さいはひたま)ひと、謹美謹美(つゝしみつゝしみ)惶美惶美(おそれみおそれみ)、申(まう)す事(こと)の洩落(もれおち)ん事(こと)を、神直日大直日(かんなをひおほなをひ)に見直(みなを)して、平(たひら)けく安(やすら)けく、左男鹿(さをしか)の耳(おんみみ)を振立(ふりたて)て、聞食(きこしめせ)と申(まう)す。

底本:国立国会図書館デジタルコレクション、保護期間満了(PDM)。現代刊の『神道大祓全集』とは別の資料です。

ゆかりの神仏

出典・参考資料