いのりのもり祈りの杜仮称

スッタニパータ「アーラヴァカの経」

← 紹介・目次へ

関西パーリ語実習会 日本語訳

日本語訳の本文

1.10. アーラヴァカの経

このように、わたしは聞きました。或る時のことです。世尊は、アーラヴィーに住んでおられます。アーラヴァカ夜叉の居所において。そこで、まさに、アーラヴァカ夜叉が、世尊のおられるところに、そこへと近づいて行きました。近づいて行って、世尊に、こう言いました。「沙門よ、出て行け」と。「友よ、いいでしょう」と、世尊は出て行きました。「沙門よ、入れ」と。「友よ、いいでしょう」と、世尊は入りました。

再度また、まさに……略……。三度また、まさに、アーラヴァカ夜叉は、世尊に、こう言いました。「沙門よ、出て行け」と。「友よ、いいでしょう」と、世尊は出て行きました。「沙門よ、入れ」と。「友よ、いいでしょう」と、世尊は入りました。

四度また、まさに、アーラヴァカ夜叉は、世尊に、こう言いました。「沙門よ、出て行け」と。「友よ、まさに、それでは、わたしは、〔もはや〕出て行くことはないでしょう。それが、あなたにとって為すべきことであるなら、それを為しなさい」と。

「沙門よ、おまえに、問いを尋ねよう。それで、もし、わたしに、〔答えを〕説き明かさないなら、あるいは、おまえの心を投げ放つ、あるいは、おまえの心臓を切り裂く、あるいは、〔両の〕足を掴んでガンガー〔川〕の彼岸に投げ放つ」と。

「友よ、天を含み、魔を含み、梵を含み、沙門や婆羅門を含む、世において、天〔の神〕や人間を含む人々において、彼が、あるいは、わたしの心を投げ放ち、あるいは、わたしの心臓を切り裂き、あるいは、〔両の〕足を掴んでガンガー〔川〕の彼岸に投げ放つであろう、その者を、まさに、わたしは見ません。友よ、ですが、ともあれ、あなたは尋ねなさい。それを、〔あなたが〕望むなら」と。そこで、まさに、アーラヴァカ夜叉は、世尊に、詩偈をもって語りかけました。

偈 181〔アーラヴァカ夜叉が尋ねた〕「いったい、何が、この〔世において〕、人にとって、最勝の富となるのですか。いったい、何が、善く歩まれたなら、安楽をもたらすのですか。いったい、何が、まさに、諸々の味のなかでは、より美味なるものとなるのですか。どのように生きる生命を、〔賢者たちは〕最勝のものと言うのですか」〔と〕。(1)

偈 182〔世尊は答えた〕「信が、この〔世において〕、人にとって、最勝の富となります。法(教え)が、善く歩まれたなら、安楽をもたらします。真理(諦)が、まさに、諸々の味のなかでは、より美味なるものとなります。智慧(慧・般若)によって生きる生命を、〔賢者たちは〕最勝のものと言います」〔と〕。(2)

偈 183〔アーラヴァカ夜叉が尋ねた〕「いったい、どのように、〔貪欲の〕激流を超えるのですか。いったい、どのように、〔輪廻の〕海を超えるのですか。いったい、どのように、苦しみを超え行くのですか。いったい、どのように、完全なる清浄となるのですか」〔と〕。(3)

偈 184〔世尊は答えた〕「信によって、〔貪欲の〕激流を超えます。〔気づきを〕怠らないこと(不放逸)によって、〔輪廻の〕海を〔超えます〕。精進によって、苦しみを超え行きます。智慧によって、完全なる清浄となります」〔と〕。(4)

偈 185〔アーラヴァカ夜叉が尋ねた〕「いったい、どのように、智慧を得るのですか。いったい、どのように、財を見出すのですか。いったい、どのように、名誉に至り得るのですか。どのように、朋友たちと〔交友を〕結ぶのですか。この世から他の世へと、どのように、死してのち、憂い悲しまないのですか」〔と〕。(5)

偈 186〔世尊は答えた〕「涅槃〔の境処〕に至り得るために、阿羅漢(人格完成者)たちの法(教え)に信を置き、〔法を〕聞こうとしている、明眼で〔気づきを〕怠らない者は、智慧を得ます。(6)

偈 187適切なることを為し、重荷をにない、奮起する者は、財を見出します。真理によって、名誉に至り得ます。〔常に〕与えている者は、朋友たちと〔交友を〕結びます。(7)

偈 188すなわち、信ある〔在家の〕家主に、真理と法(教え)と〔道心〕堅固と施捨が、これらの四つの法(性質)があるなら、彼は、まさに、死してのち、憂い悲しみません。(8)

偈 189さあ、他の多々なる沙門や婆羅門たちにもまた、尋ねなさい。すなわち、この〔世において〕、真理と調御と施捨と忍耐よりも、より一層のものが見出されるなら」〔と〕。(9)

偈 190〔アーラヴァカ夜叉が言った〕「いったい、どうして、今や、〔他の〕多々なる沙門や婆羅門たちに尋ねられましょう。すなわち、わたしは、今日、覚知します⸺それは、未来(来世)における義(利益)となります。(10)

偈 191まさに、わたしの義(利益)のために、覚者は、アーラヴィーに住するべく、やってきたのです。すなわち、わたしは、今日、覚知します⸺そこにおいて、施されたものは、大いなる果となります。(11)

偈 192〔まさに〕その、わたしは、村から村へ、都から都へと、渡り歩くでしょう⸺正覚者を礼拝しながら、そして、法(教え)が見事に法(教え)たることを〔礼拝しながら〕」〔と〕。ということで⸺(12)

アーラヴァカの経が第十となり、〔以上で〕終了となる。

この杜による要点

本文の下の「要点」は、パーリ語本文と対訳を参照し、この杜が自分の言葉でまとめたものです。訳文の引用ではなく、読み方の一つの手がかりとしてお読みください。語の解釈が複数ある箇所では、掲載訳と要点の読み方が異なることがあります。

対応する本文へ アーラヴァカ夜叉が尋ねた。人にとって最上の富は何か。何を行えば安らぎをもたらすのか。味の中で最もうまいものは何か。どう生きる命が最上と言われるのか、と。

対応する本文へ ブッダは答えた。信が最上の富であり、教えを行えば安らぎをもたらす。真実が最もうまい味であり、智慧によって生きる命が最上と言われる、と。

対応する本文へ 夜叉が尋ねた。どうやって貪りの激流を越え、輪廻の海を越え、苦しみを越え、完全に清らかになるのか、と。

対応する本文へ ブッダは答えた。信によって激流を越え、怠らないことによって海を越え、努力によって苦しみを越え、智慧によって完全に清らかになる、と。

対応する本文へ 夜叉が尋ねた。どうやって智慧を得、財を見出し、名誉に至り、友と結び、死後に嘆かずにすむのか、と。

対応する本文へ 安らぎに至ろうと、人格を完成した人の教えを信じて聞こうとし、明敏で怠らない人は、智慧を得る。

対応する本文へ ふさわしいことをし、責任を担い、奮い立つ人は財を得る。真実によって名誉に至る。与える人は友を得る。

対応する本文へ 信ある家庭人に、真実・教え・堅固さ・施しの四つがあれば、死後に嘆くことはない。

対応する本文へ さあ、ほかの修行者や聖職者にも尋ねてみなさい。真実と自制と施しと忍耐よりすぐれたものが、この世にあるかどうかを。

対応する本文へ 夜叉は言った。もう他の人に尋ねる必要はない。今日、来世の益となることを私は知ったのだから、と。

対応する本文へ 私のために覚者はアーラヴィーに来てくださった。今日私は、どこに施せば大きな実りとなるかを知った。

対応する本文へ 私は村から村へ、都から都へと渡り歩こう。正しく目覚めた人と、教えのすぐれていることを礼拝しながら。

文字サイズや読み方を切り替えて読む

収録した訳と出典

日本語訳:関西パーリ語実習会(2023年公開版)。公開元:SuttaCentral。全5章・70経と序・結び、巻末の21詩を収録版の73単位で掲載。

訳文の文字・補足を保ち、ふりがなをこの杜が読書の補助として添えています。この杜による要点は、訳文と分けて掲載しています。

公開元の日本語訳 · CC BY-NC-ND 3.0(表示・非営利・改変禁止)