スッタニパータ「犀の角の経」
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日本語訳の本文
1.3. 犀の角の経
vns35偈 35一切の生類にたいし、棒(武器)を置いて、彼らのなかの唯の一者でさえも害さずにいる者は、〔もはや〕子を求めぬもの。どうして、道友を〔求めよう〕。犀の角のように、独り、歩むがよい。(1)
vns36偈 36交流が生じた者には、諸々の愛執〔の思い〕が有る。愛執〔の思い〕に従い、この苦しみは発生する。愛執〔の思い〕から生じる〔この〕危険(患・過患)を〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(2)
vns37偈 37朋友たちや知人たちを慈しみながら(情をかけつつ)、〔その思いに〕心が縛られた者は、〔自他の〕義(利益)を失う。この恐怖を、親愛〔の情〕のうちに〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(3)
vns38偈 38あたかも、〔枝や根が〕広く絡みついた竹のように、子たちにたいし、さらに、妻たちにたいし、〔まさに〕その、期待〔の思い〕がある。〔まとわりつくものが何もない〕竹の子のように、〔何にたいしても〕執着せずにいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(4)
vns39偈 39たとえば、縛られていない〔野生の〕鹿が、林のなか、求めるままに餌場へと赴くように、識者たる人は、独存〔の境地〕を〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(5)
vns40偈 40道友たちの中にあるなら、〔余計な〕相談事が有る⸺住居において、立所において、出行において、遊行において。〔愚者の〕貪り求めるところならざる独存〔の境地〕を〔常に〕見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(6)
vns41偈 41道友たちの中にあるなら、遊興と歓楽が有る。そして、子たちにたいしては、広大なる愛情が有る。愛しいものとの別離〔の苦しみ〕を忌避している者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(7)
vns42偈 42四方〔に慈しみの思い〕ある者は、そして、〔一切に〕敵対なき者と成る。いかなるものによっても満足している者となり、諸々の危難を打ち負かす驚愕なき者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(8)
vns43偈 43出家者たちでさえも、或る者たちは救い難く、さらに、家に居住している在家の者たちも〔救い難い〕。他者の子たちにたいする思い入れ少なき者と成って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(9)
vns44偈 44あたかも、落葉した黒檀のように、諸々の在家の特徴を取り去って、勇者は、諸々の在家の結縛を断ち切って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(10)
vns45偈 45それで、もし、賢明なる道友を得るなら、共に歩む善き住者たる慧者を〔得るなら〕、一切の危難を征服して、わが意を得た者となり、気づき(念)ある者として、彼とともに、歩むがよい。(11)
vns46偈 46もし、賢明なる道友を得ないなら、共に歩む善き住者たる慧者を〔得ないなら〕、征圧した国土を捨棄して〔出家する〕王のように、林のなかのマータンガ象のように、独り、歩むがよい。(12)
vns47偈 47たしかに、〔わたしたちは〕道友の成就(獲得)を賞賛する。最勝の者たちであるなら、同等の者たちであるなら、道友として慣れ親しむべきである。これらの者たちを得ずしては、罪過なき〔施物〕を受益する者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(13)
vns48偈 48細工師の子が見事に仕立てた、金の光り輝く〔二つの腕輪〕を見て、〔まさに、その〕二つ〔の腕輪〕が、腕にあって相打っているのを〔見て〕、犀の角のように、独り、歩むがよい。(14)
vns49偈 49このように、伴侶(連れの者)と共にあるなら、わたしには、虚論の言葉が、あるいは、執着が、存するであろう。この恐怖を、未来に見ている者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(15)
vns50偈 50まさに、諸々の欲望〔の対象〕は様々で、〔蜜のように〕甘美で、意が喜びとするものである。種々様々な形態(色)で、〔人の〕心を掻き乱す。〔この〕危険を、諸々の欲望の属性(妙欲:色・声・香・味・触)のうちに見て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(16)
vns51偈 51これは、わたしにとって、かつまた、疾患であり、かつまた、腫物であり、かつまた、禍であり、かつまた、病であり、かつまた、矢であり、かつまた、恐怖である。この恐怖を、諸々の欲望の属性のうちに見て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(17)
vns52偈 52そして、寒さを、さらに、暑さを、飢えを、渇きを、諸々の風と熱を、かつまた、諸々の虻と蛇を⸺これらを、一切もろともに征服して、犀の角のように、独り、歩むがよい。(18)
vns53偈 53肩が立派に生育した、蓮華〔の紋〕ある、巨大な象のように、諸々の群れを避けて、林のなかで喜びのままに住んでいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(19)
vns54偈 54〔他者との〕社交を喜ぶ者には、すなわち、〔彼が〕暫時の解脱に触れるであろう、その状況は〔見出され〕ない。太陽の眷属(ブッダ)の言葉をこころして聞いて、犀の角のように、独り、歩むがよい。(20)
vns55偈 55諸々の見解の狂騒を超克し、〔正道の〕決定に至り得た、道の獲得者(預流道の成就者)となり、「〔わたしは〕知恵(智)が生起した者として〔世に〕存している。他によって導かれることはない」〔と〕、犀の角のように、独り、歩むがよい。(21)
vns56偈 56妄動なく、虚言なく、涸渇なく、偽装なく、汚濁と迷妄を取り払い、一切の世にたいし依存なき者と成って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(22)
vns57偈 57悪しき道友を、義(道理)ならざるものを見る者を、〔世の〕不正に〔思いが〕固着した者を、遍く避けるがよい。〔欲望の対象を〕追い求める者とは、〔気づきを〕怠る者とは、自ら、慣れ親しまぬがよい。犀の角のように、独り、歩むがよい。(23)
vns58偈 58多聞にして法(教え)を保つ者と、秀逸にして即応即答〔の智慧〕ある朋友と、親しくするがよい。諸々の義(利益)を了知して、疑いを取り除くがよい。犀の角のように、独り、歩むがよい。(24)
vns59偈 59世における、遊興と歓楽を、さらに、欲望の安楽を、十分ならずと為して、〔何も〕期待せずにいる者となり、飾り立ての境位から離れた、真理を説く者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(25)
vns60偈 60そして、子と妻、さらに、父と母、諸々の財産、諸々の穀物、かつまた、諸々の眷属⸺限りあるかぎりの諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して、犀の角のように、独り、歩むがよい。(26)
vns61偈 61「これは、執着〔の対象〕である。ここにおいて、福楽は小さく、悦楽は少なく、ここにおいて、苦痛は、より一層のものである。これは、〔人を誘惑する〕釣針である」と知って、思慧ある者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(27)
vns62偈 62水のなかの魚が網を破って〔解き放たれる〕ように、諸々の束縛するもの(結)を引き裂いて、炎が焼け跡に引き返さないように、犀の角のように、独り、歩むがよい。(28)
vns63偈 63〔生類を殺さぬように注意深く〕眼を落とし、かつまた、足の妄動ある者(欲望の対象を求めて歩き回る者)ではなく、〔感官の〕機能(根)を守り、意を守護し、〔煩悩が〕漏れ出ず、〔貪欲の炎に〕焼かれず、犀の角のように、独り、歩むがよい。(29)
vns64偈 64諸々の在家の特徴を取り払って、あたかも、葉に等しく覆われたパーリチャッタ〔樹〕のように、黄褐色の衣(袈裟)をまとい、〔家から〕出て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(30)
vns65偈 65諸々の味(味覚の喜び)にたいし、貪求を為すことなく、〔欲の〕妄動なき者となり、他者を扶養する〔義務〕なく、〔行乞のために〕歩々淡々と歩み、家々に心が縛られない者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(31)
vns66偈 66心の〔有する〕五つの〔修行の〕妨害(五蓋:欲の思い・憎悪の思い・心の沈滞と眠気・心の高揚と悔恨・疑惑の思い)を捨棄して、一切の付随する〔心の〕汚れ(随煩悩)を除き去って、依存なき者となり、愛執と憤怒を断ち切って、犀の角のように、独り、歩むがよい。(32)
vns67偈 67そして、楽と苦〔の両者〕に背を向けて、さらに、まさしく、過去における、悦意と失意〔の両者〕に〔背を向けて〕、放捨(捨:選択せず差別なき心)と止寂(奢摩他・止:専一不動の心)の清浄なる〔境地〕を得て、犀の角のように、独り、歩むがよい。(33)
vns68偈 68最高の義(勝義:涅槃)に至り得るために、精進に励み、畏縮した心なく、怠惰な生活なく、断固たる勤勉〔努力〕ある者となり、強靭と活力を具有した者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(34)
vns69偈 69静坐と瞑想(禅・静慮:禅定の境地)を遠ざけずにいる者となり、諸々の法(教え)について常に法(教え)のままに行なう者となり、諸々の生存のうちに危険を触知する者となり(苦しみの生をあるがままに知り見る者となり)、犀の角のように、独り、歩むがよい。(35)
vns70偈 70〔気づきを〕怠らず〔常に〕渇愛の滅尽を望み求めている者となり、聾唖ならざる聞ある気づきの者となり、法(真理)を究め〔正道を〕決定した〔刻苦〕精励の者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(36)
vns71偈 71諸々の音に動じない獅子のように、〔鳥捕りの〕網に着さない風のように、〔泥〕水に汚されない蓮華のように、犀の角のように、独り、歩むがよい。(37)
vns72偈 72たとえば、牙の力ある獅子が、〔敵を〕打ち負かして、獣たちの王となり、〔一切を〕征服して歩むように、諸々の辺地の臥坐所に慣れ親しみ、犀の角のように、独り、歩むがよい。(38)
vns73偈 73慈愛〔の心〕(慈)を、放捨〔の心〕(捨)を、慈悲〔の心〕(悲)を、さらに、歓喜〔の心〕(喜)を、〔これらの四つの無量なる心による〕解脱を、〔正しい〕時に〔常に〕習修しながら、一切の世〔の人々〕に遮られずにいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(39)
vns74偈 74そして、貪欲(貪)を、かつまた、憤怒(瞋)を、迷妄(痴)を捨棄して、諸々の束縛するもの(結)を引き裂いて、生命の消滅に動じずにいる者となり、犀の角のように、独り、歩むがよい。(40)
vns75偈 75〔人々は〕義(利益)を動機として、〔他者と〕親しくし、かつまた、慣れ親しむ。今日、動機なき〔真の〕朋友たちは、得難きもの。自己を義(利益)とする智慧(自己本位の断片的知識)ある人間たちは、不浄である。犀の角のように、独り、歩むがよい。ということで⸺(41)
犀の角の経が第三となり、〔以上で〕終了となる。
この杜による要点
本文の下の「要点」は、パーリ語本文と対訳を参照し、この杜が自分の言葉でまとめたものです。訳文の引用ではなく、読み方の一つの手がかりとしてお読みください。語の解釈が複数ある箇所では、掲載訳と要点の読み方が異なることがあります。
対応する本文へ すべての生き物に武器を置き、一つの命も害さない人は、子を求めず、仲間も求めない。犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 交わりから愛執が生まれ、愛執から苦しみが生じる。愛執に潜む危険を見て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 友や知人に情をかけて心が縛られると、自分の目的を失う。親しさの中の恐れを見て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 子や妻への期待は、枝の絡み合った竹のようである。絡むもののない若竹のように執着せず、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 縛られていない鹿が林で思うままに餌場へ行くように、思慮ある人は自由を求め、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 仲間といれば、暮らしでも旅でも呼びかけや相談が生じる。自由を求め、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 仲間がいると遊びや楽しみがあり、子には大きな愛情が生まれる。愛しいものとの別れの苦しみを避けて、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ どの方角でも自由に暮らし、敵意を持たず、得たものに満足し、危険にも動じない人となって、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 出家者にも在家者にも、付き合いや世話の難しい人がいる。他人の子への思い入れを少なくして、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 葉を落とした木のように在家のしるしを取り去り、在家の束縛を断ち切って、勇者は犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 賢く行いの正しい仲間を得たなら、あらゆる困難を乗り越え、喜びと気づきのうちに、その人とともに歩め。
対応する本文へ 賢く行いの正しい仲間を得られないなら、国を捨てる王のように、林の象のように、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 仲間を得ることは賞賛に値する。自分よりすぐれた人か同等の人と親しむべきである。得られないなら、非難のない施しを受けて、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 金細工師が仕立てた二つの腕輪が、腕の上でぶつかり合うのを見て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 連れがいれば、無駄話や執着が生まれるだろう。将来のこの恐れを見て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 欲望の対象は多彩で甘く心を喜ばせ、さまざまな形で心を乱す。欲望の中の危険を見て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 欲望は私にとって疾患であり、腫れ物であり、災いであり、病であり、矢であり、恐れである。この恐れを見て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 寒さも暑さも、飢えも渇きも、風も熱も、虻も蛇も、すべて乗り越えて、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 立派な肩を持つ大きな象が群れを離れて林で思うままに暮らすように、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 群れることにふけっていては、一時の解脱にも触れられない。太陽の末裔ブッダの言葉を心して聞き、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 見解の騒ぎを越え、確かな道に到達した人は、「知恵が生まれた。もう他者の導きには頼らない」と、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 貪らず、欺かず、渇望せず、人を軽んじず、濁りと迷いを払い、世に執着しない人となって、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 道理を見ない不正に固まった悪い仲間を避ける。欲を追う人、怠る人とは自ら親しまない。犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 学びが多く教えを保ち、機転のきく友と親しむ。何が益かを知り、疑いを取り除いて、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 世の遊びや楽しみや欲の安楽を重んじず、求めず、飾らず、真実を語る人となって、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 子と妻、父と母、財産と穀物と親族、あらゆる欲望の対象を捨てて、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 執着の対象は楽しみが小さく苦しみが大きく、人を釣る針のようなものだと知って、思慮ある人は犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 魚が網を破って逃れるように束縛を引き裂き、炎が焼け跡に戻らないように、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 目を伏せ、欲に駆られて歩き回らず、感覚を守り、心を守り、煩悩に流されず焼かれず、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 在家のしるしを取り払い、葉に覆われたパーリチャッタの木のように僧衣をまとって家を出て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 味を貪らず、浮つかず、養う義務がなく、施しを受けて淡々と歩み、家々に心を縛られず、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 修行を妨げる五つのものを捨て、心の汚れをすべて除き、執着せず、愛執と怒りを断って、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 楽にも苦にも背を向け、過去の喜びも失意も捨て、平静と静けさの清らかな境地を得て、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 最高の境地に至るために努め、ひるまず、怠けず、固く励み、強さと活力を備えて、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 静坐と瞑想を遠ざけず、常に教えのとおりに行い、迷いの生存の危険を感じ取って、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 怠らず渇愛の尽きることを願い、よく聞き、気づきを保ち、真理を究めて道を定め、励む人となって、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 音に動じない獅子のように、網にかからない風のように、水が付着しない蓮のように、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 牙の強い獅子が獣の王として征服して歩むように、人里離れた住まいに親しんで、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 慈しみ・平静・あわれみ・喜びの心による解放を時に応じて修め、世の何にも敵対せず、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 貪りと怒りと迷いを捨て、束縛を引き裂き、命の終わりにも動じない人となって、犀の角のように独り歩め。
対応する本文へ 人は利益のために近づき親しむ。見返りを求めない友は今日まれである。自分の利益だけを知る人は汚れている。犀の角のように独り歩め。
収録した訳と出典
日本語訳:関西パーリ語実習会(2023年公開版)。公開元:SuttaCentral。全5章・70経と序・結び、巻末の21詩を収録版の73単位で掲載。
訳文の文字・補足を保ち、ふりがなをこの杜が読書の補助として添えています。この杜による要点は、訳文と分けて掲載しています。