スッタニパータ「賎民の経」
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日本語訳の本文
1.7. 賎民の経
まさに、祭火者バーラドヴァージャ婆羅門は、世尊が、はるか遠くから、やってくるのを見ました。見て、世尊に、こう言いました。「坊主よ、まさしく、そこに⸺沙門よ、まさしく、そこに⸺賎民よ、まさしく、そこに⸺立っていろ」と。
このように説かれたとき、世尊は、祭火者バーラドヴァージャ婆羅門に、こう言いました。「婆羅門よ、さてまた、あなたは、あるいは、賎民のことを、あるいは、〔人を〕賎民に作り為す諸々の法(性質)を、知っていますか」と。「貴君ゴータマよ、まさに、わたしは、あるいは、賎民のことを、あるいは、〔人を〕賎民に作り為す諸々の法(性質)を、知りません。貴君ゴータマは、どうか、わたしに、すなわち、わたしが、あるいは、賎民のことを、あるいは、〔人を〕賎民に作り為す諸々の法(性質)を、知りうるように、そのように、法(教え)を説示してください」と。「婆羅門よ、まさに、それでは、聞きなさい。善くしっかりと、意を為しなさい。〔では〕語ります」と。「君よ、わかりました」と、まさに、祭火者バーラドヴァージャ婆羅門は、世尊に答えました。世尊は、こう言いました。
vns116偈 116〔世尊は言った〕「その人が、忿激する者であるなら、そして、怨恨ある者であるなら、さらに、〔為した〕悪を偽装する者であるなら、堕落した見解の幻術師(偽善者)であるなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(1)
vns117偈 117あるいは、一なる生まれのもの(胎生)であれ、あるいは、また、二なる生まれのもの(卵生)であれ、彼が、この〔世において〕、命あるものを害するなら⸺彼に、命あるものにたいする思いやりが存在しないなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(2)
vns118偈 118彼が、村々を、さらに、町々を、打破し、占領し、圧制者と呼称されたなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(3)
vns119偈 119もしくは、村においてであろうが、林においてであろうが、〔まさに〕その、他者たちにとって、わがものとされたもの(私有物)を、盗みごころから、与えられていないのに取るなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(4)
vns120偈 120彼が、まさに、借金を抱えておきながら、叱責されるとなると、『あなたからの借金は、まさに、存在しない』と逃げるなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(5)
vns121偈 121彼が、まさに、微々たるものを欲することから、道行く人を殺して、微々たるものを奪い取るなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(6)
vns122偈 122自己を因とし、他者を因とし、さらに、財を因として、その人が、じかに〔問いを〕尋ねられた者(教え手)として、虚偽を説くなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(7)
vns123偈 123彼が、親族たちの〔妻たちと通じるなら〕、あるいは、友人たちの妻たちと通じるなら⸺〔それも〕無理強いで、あるいは、了解のうえでも⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(8)
vns124偈 124彼が、母を、あるいは、父を、若さ〔の盛り〕が去り、老い朽ちた者を、〔やれば〕できる者として存していながら、養わないなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(9)
vns125偈 125彼が、母を、あるいは、父を、兄弟を、姉妹を、姑を、言葉で傷つけ、悩ますなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(10)
vns126偈 126彼が、義(意味)を尋ねられた者として存していながら、義(意味)ならざることを教え、隠されていることを告げるなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(11)
vns127偈 127彼が、悪しき行為(業)を為しておきながら、『〔誰も〕わたしのことを知ってはならない』と求めるなら⸺彼が、生業を隠している者であるなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(12)
vns128偈 128彼が、まさに、他者の家に赴いて、御馳走を食べておきながら、〔客として〕やってきた者を歓迎しないなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(13)
vns129偈 129彼が、婆羅門を、あるいは、沙門を、あるいは、また、他の乞食者を、虚偽の論で騙すなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(14)
vns130偈 130彼が、婆羅門を、あるいは、沙門を、食事の時がやってきたのに、言葉で悩ませ、かつまた、〔食を〕与えないなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(15)
vns131偈 131彼が、この〔世において〕、正しからざる者たちの〔論を〕説き、迷妄に包まれ、微々たるものを求め願っているなら⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(16)
vns132偈 132彼が、そして、自己を褒め上げ、さらに、他者たちを見下すなら、自らの思量によって、下劣な者となる⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(17)
vns133偈 133〔他者を〕悩ませ、かつまた、吝嗇で、悪しき欲求があり、物惜〔の思い〕があり、狡猾で、恥〔の思い〕なく(無慚)、〔良心の〕咎めなき者(無愧)⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(18)
vns134偈 134彼が、覚者(ブッダ)を誹謗するなら、さらに、あるいは、彼の弟子を、遍歴遊行者であれ、あるいは、在家者であれ、〔誹謗するなら〕⸺彼のことを、『賎民である』と知るがよい。(19)
vns135偈 135彼が、まさに、阿羅漢(人格完成者)ならざる者として存していながら、『阿羅漢である』〔と〕明言するなら、梵を含む世における盗賊であり、この者は、まさに、最低の賎民です。(20)
vns136偈 136すなわち、それらの、わたしによって明示された者たちが⸺これらの者たちが、まさに、賎民と説かれた者たちです。〔人は〕出生によって、賎民(非人)と成るのではありません。〔人は〕出生によって、婆羅門(聖職者)と成るのではありません。行為によって、賎民と成ります。行為によって、婆羅門と成ります。(21)
vns137偈 137それを、このことによってもまた知りなさい⸺すなわち、わたしの〔示す〕、この実例のとおりに。チャンダーラ(旃陀羅:賎民・非人)の子で、『犬殺しのマータンガ』として〔世に〕聞こえた者がいます。(22)
vns138偈 138彼は、マータンガは、〔まさに〕その、極めて得難い、最高の福徳に至り得た者であり、多くの士族たちや婆羅門たちが、彼の奉仕にやってきました。(23)
vns139偈 139天の乗物に乗って、彼は、〔世俗の〕塵を離れる大いなる道を〔行き〕、欲望〔の対象〕にたいする貪り〔の思い〕を離貪させて、梵の世(梵天界)に近しく赴く者と成りました(梵天界に再生した)。〔チャンダーラ族という〕出生は、彼を妨げませんでした⸺梵の世の再生あることから。(24)
vns140偈 140〔聖典の〕読誦者の家に生まれ、呪文を眷属とする婆羅門たちが、彼らが、諸々の悪しき行為のうちにあるのが、一度ならず見受けられます。(25)
vns141偈 141まさしく、所見の法(現世)において非難されるべき者たちであり、そして、未来(来世)においては悪しき境遇(悪趣)があります。〔婆羅門という〕出生は、彼らを妨げません⸺悪しき境遇あることから、あるいは、非難から。(26)
vns142偈 142〔人は〕出生によって、賎民と成るのではありません。〔人は〕出生によって、婆羅門と成るのではありません。行為によって、賎民と成ります。行為によって、婆羅門と成ります」と。(27)
このように説かれたとき、祭火者バーラドヴァージャ婆羅門は、世尊に、こう言いました。「貴君ゴータマよ、すばらしいことです。……略……。貴君ゴータマは、わたしを、在俗信者として認めてください⸺今日以後、命ある限り、帰依所に赴いた者として」〔と〕。ということで⸺
賎民の経が第七となり、〔以上で〕終了となる。
この杜による要点
本文の下の「要点」は、パーリ語本文と対訳を参照し、この杜が自分の言葉でまとめたものです。訳文の引用ではなく、読み方の一つの手がかりとしてお読みください。語の解釈が複数ある箇所では、掲載訳と要点の読み方が異なることがあります。
対応する本文へ 怒り、怨み、悪を隠し、堕落した見解を持ち、人を欺く。そういう人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 胎から生まれたものでも卵から生まれたものでも、命あるものを害し、思いやりのない人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 村や町を破壊し占領して、圧制者と呼ばれる人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 村でも林でも、他人のものを盗みごころで、与えられないのに取る人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 借金をしておきながら、催促されると「借りた覚えはない」と逃げる人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ わずかなものが欲しくて道行く人を殺し、奪い取る人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 自分のため、他人のため、財のために、問われて嘘の証言をする人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 親族や友人の妻と、力ずくであれ合意であれ通じる人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ できるのに、若さを失って老いた母や父を養わない人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 母や父、兄弟や姉妹、義母に暴力を振るい、言葉で傷つける人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ ためになることを尋ねられて、かえって害になることを教え、意図を隠して助言する人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 悪いことをしておいて「誰にも知られたくない」と願い、仕事を隠す人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 他人の家でごちそうになっておきながら、来客をもてなさない人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 聖職者や修行者や施しを乞う人を嘘でだます人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 食事の時刻に来た聖職者や修行者を言葉で悩ませ、食を与えない人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 迷いに包まれ、わずかな利益を得ようと、事実に反することを語る人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 自分をほめ上げ、他人を見下し、おごりによって卑しくなった人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 人を悩ませ、けちで、悪い欲があり、物惜しみし、ずる賢く、恥も良心の咎めもない人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 目覚めた人や、その弟子を、出家であれ在家であれそしる人を、賤しい人と知れ。
対応する本文へ 人格を完成していないのに「完成した」と名乗る人は、梵天を含む世界の盗賊であり、最も賤しい人である。
対応する本文へ 卑しい人になるのも、真に尊ぶべきバラモンになるのも、生まれによらず行いによる、と説く。
対応する本文へ その例として、低い身分とされた家の子で、マータンガとして知られた人のことを知りなさい。
対応する本文へ マータンガは得がたい最高の名声に至り、多くの王族やバラモンが彼に仕えに来た。
対応する本文へ 彼は天の乗り物で汚れを離れた大道を行き、欲望への貪りを離れて梵天の世界に生まれた。生まれは彼の妨げにならなかった。
対応する本文へ 聖典を読む家に生まれ、呪文を身内とする聖職者たちが、悪い行いをしているのが何度も見られる。
対応する本文へ 彼らはこの世で非難され、来世では悪い境遇に落ちる。生まれは、非難や悪い境遇から彼らを守らない。
対応する本文へ 人の卑しさも、真に尊ぶべきバラモンとしてのあり方も、生まれによらず、その人の行いによって決まると説く。
収録した訳と出典
日本語訳:関西パーリ語実習会(2023年公開版)。公開元:SuttaCentral。全5章・70経と序・結び、巻末の21詩を収録版の73単位で掲載。
訳文の文字・補足を保ち、ふりがなをこの杜が読書の補助として添えています。この杜による要点は、訳文と分けて掲載しています。