スッタニパータ「ニグローダ・カッパの経」
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日本語訳の本文
2.12. ニグローダ・カッパの経
vns345偈 343〔尊者ヴァンギーサが尋ねた〕「まさしく、所見の法(現世)において、諸々の疑惑を断ち切る方である、〔まさに〕その、至上の智慧ある教師(ブッダ)に、〔わたしは〕尋ねます。アッガーラヴァにおいて、比丘が、命を終えました。知名ある者であり、盛名ある者であり、自己が寂滅した者です。(1)
vns346偈 344世尊よ、『ニグローダ・カッパ』という、その婆羅門の名は、あなたによって付けられました。彼は、あなたを礼拝しながら、〔苦からの〕解き放ちを期す者として、精進に励む者として、断固として法(真理)を見る者として、〔世を〕歩みました。(2)
vns347偈 345釈迦〔族〕の方よ、一切に眼ある方よ、わたしたちは、全てもろともに、彼のことを、〔あなたの〕弟子のことを、了知することを求めます。わたしたちの〔両の〕耳は、〔あなたの答えを〕聞くために待ち構えています。あなたは、わたしたちの教師です。あなたは、無上なる方として〔世に〕存しています。(3)
vns348偈 346わたしたちの疑惑を、まさしく、断ち切ってください。それを、わたしに説いてください。広き智慧ある方よ、〔彼が〕完全なる涅槃に到達した者であるかを、〔わたしたちに〕知らせてください。一切に眼ある方よ、まさしく、わたしたちの中において、語ってください⸺千の眼ある帝釈〔天〕(インドラ神)が、天〔の神々〕たちに〔語る〕ように。(4)
vns349偈 347それらが何であれ、諸々の拘束は、この〔世における〕、諸々の迷妄の道も、諸々の知恵なき徒も、諸々の疑惑の境位も、それらは、如来に至り得て〔そののち、もはや〕有ることなくあります。なぜなら、〔如来の〕この眼は、〔世の〕人たちのなかの最高のものであるからです。(5)
vns350偈 348もし、人士たる方が、諸々の〔心の〕汚れ(煩悩)を、あたかも、風が層雲を〔吹き払う〕ように、まさに、しっかりと打ち払わないなら、一切の世は、まさしく、〔迷妄に〕覆われた闇として存するでしょうし、光輝ある人たちもまた、光り輝くことはないでしょう。(6)
vns351偈 349しかしながら、慧者たちは、灯火の作り手たちとして〔世に〕有ります。勇者よ、〔まさに〕その、あなたのことを、わたしは、まさしく、そのとおりに思います。〔あるがままの〕観察者と知り、〔わたしたちは、あなたのもとへと〕近しく赴いたのです。諸衆のなか、わたしたちに、カッパ(ニグローダ・カッパ)のことを明らかにしてください。(7)
vns352偈 350麗しき方よ、麗しき言葉を、すみやかに発してください⸺白鳥が、〔首を〕もたげて、おもむろに〔鳴く〕ように、吟じてください⸺美しく整えられた、まろやかな声で。まさしく、全ての者たちが、〔心が〕真っすぐに赴いた者たちとなり、あなたの〔言葉を〕聞くでありましょう。(8)
vns353偈 351残りなく生と死を捨棄した清き方に請い求めて、法(真理)を説いてもらいましょう。なぜなら、凡夫たちには、欲することを〔究明して〕為すことはなく、しかしながら、如来たちには、〔是非を〕究明して為すことがあるからです。(9)
vns354偈 352〔正しく〕成就された説き明かし(授記)は、これは、正しく真っすぐな智慧ある、あなたの正しく把握するところです。この最後の合掌は、しっかりと手向けられました。至上の智慧ある方よ、〔答えを〕知っている者は、〔わたしたちを〕迷わせてはいけません。(10)
vns355偈 353彼此における聖なる法(教え)を見出しておきながら、至上の勇者たる方よ、〔答えを〕知っている者は、〔わたしたちを〕迷わせてはいけません。あたかも、炎暑のさなか、炎暑に焼かれた者が、水を〔望み求める〕ように、〔わたしは、あなたの〕言葉を待ち望みます。所聞〔の雨〕を降らせてください。(11)
vns356偈 354それ(涅槃)を義(目的)として、カッパーヤナ(カッパ)は梵行を歩みました。どうでしょう、彼の、その〔義〕は、無駄ならずにあり、彼は、〔生存の依り所を残すことなく〕涅槃に到達したのでしょうか、それとも、〔生存の〕依り所という残りものを有する者(有余依)として〔命を終えたのでしょうか〕。〔彼が〕解脱者として有った、そのとおりに、〔わたしたちは〕それを聞きたいのです」〔と〕。(12)
vns357偈 355かくのごとく、世尊は〔答えた〕「長夜にわたり悪しき習いとなった、黒き者(悪魔)の流れを、名前と形態(名色:現象世界)にたいする渇愛〔の思い〕を、〔カッパは〕この〔世において〕断ちました。生と死を、残りなく超えました」〔と〕。かくのごとく、世尊は説いた⸺五者(ブッダが最初に説法した五人の修行者)にとっての最勝者たる方は。(13)
vns358偈 356〔尊者ヴァンギーサが言った〕「第七の聖賢たる方よ、〔まさに〕この〔わたし〕は、あなたの言葉を聞いて、〔心が〕清まります(より信を強くする)。わたしが尋ねたことは、まさに、無駄ならざるもの。婆羅門(ブッダ)は、わたしを騙しませんでした。(14)
vns359偈 357すなわち、〔覚者の〕説くとおり、そのとおりに為す者として、覚者の弟子(カッパ)は、〔世に〕有りました。幻術師の死魔が広げた堅固な網を断ち切ったのです。(15)
vns360偈 358世尊よ、カッピヤ(カッパ)は、執取の最初となるもの(執着の起源・根本原因)を見ました。カッパーヤナ(カッパ)は、まさに、極めて超え難い死魔の領域を超え行ったのです」〔と〕。ということで⸺(16)
ニグローダ・カッパの経が第十二となり、〔以上で〕終了となる。
この杜による要点
本文の下の「要点」は、パーリ語本文と対訳を参照し、この杜が自分の言葉でまとめたものです。訳文の引用ではなく、読み方の一つの手がかりとしてお読みください。語の解釈が複数ある箇所では、掲載訳と要点の読み方が異なることがあります。
対応する本文へ 尊者ヴァンギーサが尋ねた。この世で疑いを断ち切る至上の智慧の師に尋ねます。アッガーラヴァで、名高く心の静まった修行者が命を終えました。
対応する本文へ 世尊よ、その人にニグローダ・カッパという名をつけたのはあなたです。彼はあなたを礼拝し、解き放ちを望み、励み、固く真理を見つめて歩みました。
対応する本文へ 釈迦族の方、すべてを見る方よ、私たちは皆、その弟子のことを知りたいのです。耳は答えを待っています。あなたは私たちの無上の師です。
対応する本文へ 私たちの疑いを断ってください。広い智慧の方よ、彼が完全な安らぎに至ったかを知らせてください。千の眼の帝釈天が神々に語るように、私たちの中で語ってください。
対応する本文へ 束縛も迷いの道も、無知に属するものも疑いのもとも、如来のもとでは消えていく。如来の智慧の目こそ、人々にとって最上だからだ、と語る。
対応する本文へ もしあなたが、風が雲を吹き払うように煩悩をしっかり払わなかったなら、全世界は闇に覆われたままで、光り輝く人も輝かなかったでしょう。
対応する本文へ 賢者は灯火を作る人です。勇者よ、私はあなたをそのような方と思い、ありのままに見る方と知って近づきました。人々の中で、カッパのことを明らかにしてください。
対応する本文へ 麗しい方よ、白鳥が首をもたげてゆるやかに鳴くように、整った柔らかな声ですみやかに語ってください。皆が心をまっすぐにして、あなたの言葉を聞くでしょう。
対応する本文へ 生と死を残りなく捨てた清らかな方に請い、真理を説いてもらいましょう。凡人は望みのままに行いますが、如来は是非を究めて行うからです。
対応する本文へ 正しく成就した説き明かしは、まっすぐな智慧を持つあなたの把握するところです。この最後の合掌をしっかり手向けます。至上の智慧の方よ、知っているのに迷わせないでください。
対応する本文へ あらゆる聖なる教えを見出した至上の勇者よ、知っているのに迷わせないでください。炎暑に焼かれた人が水を望むように、私はあなたの言葉を待ちます。教えの雨を降らせてください。
対応する本文へ カッパは安らぎを目的として清らかな行いを歩みました。その目的は無駄ではなく、彼は生存の依り所を残さず安らぎに至ったのか、それとも残して命を終えたのか。彼がどう解き放たれたかを聞きたいのです。
対応する本文へ ブッダは答えた。長く悪い習いとなった悪魔の流れ、現象世界への渇愛を、カッパはこの世で断ち、生と死を残りなく越えた、と。
対応する本文へ ヴァンギーサは言った。第七の賢者よ、あなたの言葉を聞いて心が清まります。私の問いは無駄ではなく、聖者は私を欺きませんでした。
対応する本文へ 覚者の弟子カッパは、自ら語ったとおりに行い、欺く死の張った広く堅固な網を断ち切ったのです。
対応する本文へ 世尊よ、カッパは執着の根本を見ました。カッパは、越えがたい死の領域を越えていったのです。
収録した訳と出典
日本語訳:関西パーリ語実習会(2023年公開版)。公開元:SuttaCentral。全5章・70経と序・結び、巻末の21詩を収録版の73単位で掲載。
訳文の文字・補足を保ち、ふりがなをこの杜が読書の補助として添えています。この杜による要点は、訳文と分けて掲載しています。