スッタニパータ「婆羅門の法にかなう者の経」
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日本語訳の本文
2.7. 婆羅門の法にかなう者の経
vns286偈 284〔世尊は言った〕「過去の聖賢たちは、自制された自己ある〔真の〕苦行者たちとして〔世に〕存しました。五つの欲望の属性(五妙欲:色・声・香・味・触)を捨棄して、自己の義(目的)を歩みました。(1)
vns287偈 285〔過去の〕婆羅門たちに、家畜たちは存在しませんでした。黄金なく、穀物なく、〔聖典の〕読誦を財産とし穀物とする者たちとして〔世に〕存し、梵という財宝(心身における最高のあり方)を警護しました。(2)
vns288偈 286すなわち、彼らのために、作り為され、準備され、存していた、門口の食(施しの食)は、〔人々は〕それを、信によって作り為されたものを探し求める者たち(行乞者)に施すべきと思い考えました。(3)
vns289偈 287種々に染められた諸々の衣によって、諸々の臥具によって、そして、諸々の住居によって、栄える地方や国土の者たちは、それらの婆羅門たちを礼拝しました。(4)
vns290偈 288婆羅門たちは、不可侵の者たちとして、不可伐の者たちとして、法(真理)に守護された者たちとして、〔世に〕存しました。誰であれ、家々の戸口において、全てにわたり、彼らを妨げませんでした。(5)
vns291偈 289四十八年のあいだ、彼らは、童貞の梵行を歩みました。かつて、婆羅門たちは、明知と行ないの遍き探求を行ないました。(6)
vns292偈 290婆羅門たちは、他者〔の妻〕のもとに赴きませんでした。彼らは、また、妻を買うこともありませんでした。まさしく、相愛の者と共に住むこと(夫婦生活)を、一緒になって喜び合いました。(7)
vns293偈 291〔適切なる〕その時より他には、月経で離れている〔妻〕に向かって、〔その〕間、婆羅門たちは、まさに、淫事の法(性質)に赴きません(性交しない)。(8)
vns294偈 292そして、〔人々は、彼らの〕梵行を、かつまた、戒を、正直を、温厚を、苦行を、温和を、かつまた、不害を、さらに、また、忍耐を、褒め称えました。(9)
vns295偈 293すなわち、彼らのなかの最高の者として存した、断固たる勤勉〔努力〕ある梵(婆羅門)は、彼は、あるいは、また、夢の中でさえも、淫事の法(性質)に赴きませんでした。(10)
vns296偈 294ここに、識者の類の者たちである、或る者たちは、彼の行持に随学しながら、そして、〔彼の〕梵行を、かつまた、戒を、さらに、また、忍耐を、褒め称えました。(11)
vns297偈 295〔彼らは〕米を、臥具を、衣を、さらに、酥(バター)と油を、乞い求めて、法(正義)によって集めて、そののち、祭祀を営みました。(12)
vns298偈 296準備された祭祀において、彼らは、まさに、牛たちを殺しませんでした。母が、父が、兄弟が、あるいは、さらに、また、他の親族たちが、そうであるように、わたしたちにとって、牛たちは、彼らにおいて諸々の薬が生まれる、最高の朋友たちであり⸺(13)
vns299偈 297そのように、〔わたしたちに〕食べ物を与え、かつまた、活力を与え、色艶を与え、安楽を与えてくれるのが、これら〔の牛たち〕であり、この義(利益)たる所以を知って、彼らは、まさに、牛たちを殺しませんでした。(14)
vns300偈 298繊細にして、大いなる身体の、色艶と福徳ある〔過去の〕婆羅門たちは、諸々の自らの法(性質)によって、諸々の為すべきことや為すべきではないことに邁進する者たちであり、〔彼らが〕世に転起した、そのあいだ、この人々は、安楽に満ち栄えました。(15)
vns301偈 299〔しかしながら〕彼らに、転倒〔の表象〕が存しました(不実の思いが生まれた)⸺微細な〔欲の喜び〕から、〔まさに、その〕微細なものを、〔欲望の対象として〕見て、さらに、王の華やかさを〔見て〕、〔装いを〕十二分に作り為した女性たちを〔見て〕⸺(16)
vns302偈 300さらに、良馬を繋ぎ見事に作られた諸々の車を〔見て〕、諸々の彩りあざやかな刺繍を〔見て〕、等分に計量され区分された諸々の住居地を〔見て〕、さらに、諸々の住居を〔見て〕⸺(17)
vns303偈 301牛たちの輪に遍く囲まれ、美女たちの群れを擁する、巨万の人間の財物を、婆羅門たちは貪り求めました。(18)
vns304偈 302彼らは、そこにおいて、諸々の呪文を編纂して、オッカーカ〔王〕(甘蔗王:古代の大王)のもとへと、そこへと近しく赴きました。〔彼らは言いました〕『〔あなたは〕多大なる財産と穀物ある者として〔世に〕存している。祭祀をしなさい。あなたには、多くの富がある。祭祀をしなさい。あなたには、多くの財がある』〔と〕。(19)
vns305偈 303そして、そののち、婆羅門たちに説得された、車上の雄牛たる王は、馬の犠牲〔祭〕や人の犠牲〔祭〕を、サンマーパーサ〔祭〕やヴァージャペイヤ〔祭〕やニラッガラ〔祭〕を、これらの祭祀を執り行なって、財を、婆羅門たちに与えました。(20)
vns306偈 304牛たちを、そして、臥具を、かつまた、衣を、〔装いを〕十二分に作り為した女性たちを、さらに、良馬を繋ぎ見事に作られた諸々の車を、諸々の彩りあざやかな刺繍を⸺(21)
vns307偈 305等分に〔計量され〕見事に区分された諸々の喜ばしき住居地を種々なる穀物で満たして、財を、婆羅門たちに与えました。(22)
vns308偈 306そして、彼らは、そこにおいて、財を得て、蓄積することを喜び合いました。〔自らの〕欲求に沈んだ彼らの渇愛〔の思い〕は、より一層、増大しました。彼らは、そこにおいて、諸々の呪文を編纂して、ふたたび、オッカーカ〔王〕のもとへと近しく赴きました。(23)
vns309偈 307〔彼らは言いました〕『そして、水が、さらに、地が、黄金が、財産や穀物が、そうであるように、このように、牛たちは、人間たちのものである。まさに、それは、命あるものたちの必需品である。祭祀をしなさい。あなたには、多くの富がある。祭祀をしなさい。あなたには、多くの財がある』〔と〕。(24)
vns310偈 308そして、そののち、婆羅門たちに説得された、車上の雄牛たる王は、幾百千の牛たちを、祭祀において屠らせました。(25)
vns311偈 309〔牛たちは〕足によって〔害すること〕なく、角によって〔害すること〕なく、何によってであれ、まさに、〔人を〕害することはありません。牛たちは、羊と等しく温和で、瓶に乳を出してくれます。それら〔の牛たち〕を、王は、角を掴まえて、刃でもって屠らせました。(26)
vns312偈 310そののち、天〔の神々〕たちは、そして、祖霊たちは、インダ(インドラ神・帝釈天)は、阿修羅や羅刹たちは、『法(正義)にあらず』と泣き叫びました⸺すなわち、牛のうえに刃が落ちたので。(27)
vns313偈 311かつては、欲求(本能)と飢餓(空腹になること)と老化という三つの病〔だけ〕が、〔人間たちに〕存在しました。しかしながら、家畜たちの屠殺から、〔新たに〕九十八〔の病〕が起こりました。(28)
vns314偈 312この法(正義)ならざることが、過去のこととして、諸々の棒(暴力)のなかの〔一つの〕現われとして、〔世に〕有りました。汚れなき者たちが殺され、祭祀をする者たちは、法(正義)から転落します。(29)
vns315偈 313このように、この微細な法(性質)が、過去のこととして〔世に有り〕、識者によって非難されました。そこにおいて、このようなことを見るので、人々は、祭祀者を非難します。(30)
vns316偈 314このように、法(正義)が失われたとき、隷民と庶民たちは分裂し、士族たちは多々に分裂し、妻は亭主を軽蔑しました。(31)
vns317偈 315士族たちは、そして、梵〔天〕(ブラフマー神)の眷属たちは、さらに、すなわち、他の、氏姓に守られた者たちも、出生の論(分相応の生き方)を放却して、諸々の欲望の支配へと従い行きました」と。(32)
このように説かれたとき、それらの婆羅門の大家たちは、世尊に、こう言いました。「貴君ゴータマよ、すばらしいことです。……略……。貴君ゴータマは、わたしたちを、在俗信者として認めてください⸺今日以後、命ある限り、帰依所に赴いた者たちとして」〔と〕。ということで⸺
婆羅門の法にかなう者の経が第七となり、〔以上で〕終了となる。
この杜による要点
本文の下の「要点」は、パーリ語本文と対訳を参照し、この杜が自分の言葉でまとめたものです。訳文の引用ではなく、読み方の一つの手がかりとしてお読みください。語の解釈が複数ある箇所では、掲載訳と要点の読み方が異なることがあります。
対応する本文へ ブッダは言った。昔の賢者たちは、自分を抑えた真の苦行者で、五つの欲望の対象を捨てて自分の目的に向かって歩んだ、と。
対応する本文へ 昔の聖職者には家畜も黄金も穀物もなく、聖典を唱えることを財産とし、心の最高のあり方という宝を守っていた。
対応する本文へ 彼らのために門口に用意された施しの食は、信をもって求める行乞者に施すべきものと人々は考えた。
対応する本文へ 栄える地方や国の人々は、染めた衣や寝具や住まいをもって、その聖職者たちを敬った。
対応する本文へ 聖職者たちは侵されず傷つけられず、真理に守られていた。どの家の戸口でも、誰も彼らを妨げなかった。
対応する本文へ 四十八年の間、彼らは童貞の清らかな行いを歩んだ。昔の聖職者は明知と行いを求め続けた。
対応する本文へ 昔の聖職者は他人の妻のもとへ行かず、妻を買うこともなく、愛し合う者どうしが共に暮らすことを喜んだ。
対応する本文へ ふさわしい時のほかには、月のものの間など、聖職者は妻と交わることがなかった。
対応する本文へ 清らかな行い、戒、正直、温厚、修行の熱意、温和、不害、忍耐が、昔のバラモンたちには尊ばれていた。
対応する本文へ 彼らの中で最高の、固い決意で励む聖職者は、夢の中でさえ淫らなことに向かわなかった。
対応する本文へ 理解のある人々は、その行いにならい、清らかな行いと戒と忍耐をほめたたえた。
対応する本文へ 彼らは米や寝具や衣、バターや油を乞い求め、正しく集めたうえで祭祀を営んだ。
対応する本文へ 用意された祭祀で、彼らは牛を殺さなかった。母や父や兄弟や親族と同じように、牛は薬を生む最高の友だったからである。
対応する本文へ 牛は食べ物と活力と容色と安楽を与えてくれる。この益を知って、彼らは牛を殺さなかった。
対応する本文へ 立派な姿と名声を備えた昔のバラモンたちが、自らの教えに沿って務めに励んでいた間、人々は安楽に栄えた、と語られる。
対応する本文へ しかし王の華やかな暮らしや着飾った女性たちを目にして、彼らの心は少しずつ変わっていった。
対応する本文へ 良馬をつないだ見事な車を見て、彩り豊かな刺繍を見て、整然と区画された土地と住居を見て、
対応する本文へ 牛の群れに囲まれ、美女を抱える人間の巨万の財を、聖職者たちは貪り求めた。
対応する本文へ 彼らは呪文を編んでオッカーカ王のもとへ行き、「あなたは多くの財産と穀物を持っている。祭祀をしなさい」と言った。
対応する本文へ 聖職者たちに説き伏せられた王は、馬や人を犠牲にする祭りなど、さまざまな祭祀を行って、財を聖職者たちに与えた。
対応する本文へ 牛と寝具と衣、着飾った女性たち、良馬をつないだ見事な車、彩り豊かな刺繍、
対応する本文へ 整然と区画され穀物で満たされた喜ばしい住居地。これらの財を王は聖職者たちに与えた。
対応する本文へ 財を得た彼らは蓄えることを喜び、欲に沈んで渇愛をますます増やした。彼らはまた呪文を編んで、ふたたび王のもとへ行った。
対応する本文へ 「水や地や黄金や穀物と同じように、牛は人間のものであり、命あるものの必需品である。あなたは多くの財を持っている。祭祀をしなさい」と。
対応する本文へ 聖職者たちに説き伏せられた王は、幾十万の牛を祭祀で屠らせた。
対応する本文へ 牛は足でも角でも誰も害さず、羊のようにおとなしく、瓶に乳を出してくれる。その牛の角をつかんで、王は刃で屠らせた。
対応する本文へ 牛に刃が落ちたとき、神々も祖霊も帝釈天も阿修羅も羅刹も、「正しくない」と叫んだ。
対応する本文へ 昔の病は欲求・飢え・老いの三つだけだったが、家畜を殺すようになって九十八に増えた、とこの経は物語る。
対応する本文へ この不正が、昔、暴力の現れの一つとして起こった。汚れのないものが殺され、祭祀をする者は正しさから転落する。
対応する本文へ こうして、この卑しい性質が昔に生まれ、理解のある人々に非難された。これを見て、人々は祭祀をする者を非難する。
対応する本文へ このように正しさが失われたとき、隷民と庶民は分裂し、武士たちも分裂し、妻は夫を軽んじるようになった。
対応する本文へ 王族も、生まれだけを誇るバラモンも、氏族に守られた人々も、従来の生まれに関する規範を捨て、欲望の支配に従った、と語られる。
収録した訳と出典
日本語訳:関西パーリ語実習会(2023年公開版)。公開元:SuttaCentral。全5章・70経と序・結び、巻末の21詩を収録版の73単位で掲載。
訳文の文字・補足を保ち、ふりがなをこの杜が読書の補助として添えています。この杜による要点は、訳文と分けて掲載しています。