スッタニパータ「洞窟についての八なるものの経」
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日本語訳の本文
4.2. 洞窟についての八なるものの経
vns778偈 772〔煩悩の〕洞窟(身体)に執着し、多く〔の迷妄〕に覆われた者⸺迷妄ならしむもの(欲望の対象)のうちに沈み、止住している人⸺まさに、そのような種類の者は、彼は、遠離〔の境地〕から遠くにある。なぜなら、世における諸々の欲望〔の対象〕は、まさに、捨棄し易きものではないからである。(1)
vns779偈 773〔心の〕欲求という因縁ある者たち、生存(有)の快楽に結縛された者たち、彼らは、解脱し難い。なぜなら、他のものによる解脱(他者・他物を依り所とする解脱)は、〔どこにも存在し〕ないからである。未来に、あるいは、また、過去について、〔あれこれと〕期待している者たちがいる。あるいは、〔現前する〕これらの欲望〔の対象〕を、あるいは、諸々の以前のものを、〔貪りの思いで〕渇望しながら。(2)
vns780偈 774諸々の欲望〔の対象〕について、貪り求め、追い求め、遍く迷乱した者たち⸺しみったれで、〔世の〕不正に〔思いが〕固着した、それらの者たちは、〔いざ、死の〕苦しみ〔の前〕に連れて行かれたなら、〔うってかわって〕嘆き悲しむ。「死滅した〔わたしたち〕は、これから、いったい、どう成るのだろう」〔と〕。(3)
vns781偈 775まさに、それゆえに、人は、まさしく、この〔世において〕、学ぶように。それが何であれ、世において、「不正である」と知るなら、それを因として、不正を行なうことがないように。慧者たちは言う。「まさに、この生命(寿命)は、僅かである」〔と〕。(4)
vns782偈 776〔わたしは〕見る⸺世において、震えおののいている〔人々〕を⸺諸々の生存にたいする渇愛に陥った、この人々を。下劣な人たちは、死魔の門にて泣き喚く⸺諸々の種々なる生存にたいする渇愛〔の思い〕から離れられずに。(5)
vns783偈 777見よ⸺わがものと〔錯視〕されたもの(執着の対象)のなかで、震えおののいている者たちを⸺水少なく、涸れた流れのなかにいる、魚たちのような者たちを(彼らは、所有物を失う不安と恐怖で悩み苦しんでいる)。このことをもまた見て、我執なき者として〔世を〕歩むように⸺諸々の生存にたいし、執着〔の思い〕を為さずにいる者となり(何も執着せず、世を歩むべきである)。(6)
vns784偈 778〔種々に対立する〕両極について、欲〔の思い〕を取り除くように⸺〔感官とその対象の〕接触(触:感覚の発生)を遍く知って、貪求なき者となり。〔まさに〕その、自己を難じる者が〔為すこと〕、それを為さずにいる者は⸺慧者は、諸々の見られ聞かれたもの(欲望の対象)に汚されない。(7)
vns785偈 779〔心中の〕表象(想:概念・心象)を遍く知って、〔貪欲の〕激流を超え渡るように⸺諸々の執持〔の対象〕(所有物)に汚されない牟尼(沈黙の聖者)となり。〔貪欲の〕矢を引き抜き、〔気づきを〕怠ることなく〔世を〕歩んでいる者は、この世を、さらに、他〔の世〕を、〔両者ともに〕願い求めない。ということで⸺(8)
洞窟についての八なるものの経が第二となり、〔以上で〕終了となる。
この杜による要点
本文の下の「要点」は、パーリ語本文と対訳を参照し、この杜が自分の言葉でまとめたものです。訳文の引用ではなく、読み方の一つの手がかりとしてお読みください。語の解釈が複数ある箇所では、掲載訳と要点の読み方が異なることがあります。
対応する本文へ 身体という洞窟に執着し、多くの迷いに覆われ、欲望の対象に沈んで留まる人は、離れて静まる境地から遠い。世の欲望の対象は捨てやすいものではないからである。
対応する本文へ 欲求を原因とし、生存の快楽に縛られた人々は解き放たれにくい。他のものによる解放はないからである。未来や過去をあれこれ期待し、目の前の欲望や以前のものを渇望している。
対応する本文へ 欲望の対象を貪り求めて迷い、けちで不正に固まった人々は、死の苦しみを前にすると嘆く。「死んだら私たちはどうなるのか」と。
対応する本文へ だから人はこの世で学べ。世で不正と知ることを、それを理由に行わないように。賢者は言う、この命はわずかである、と。
対応する本文へ 見る、世で震えている人々を。生存への渇愛に陥ったこの人々を。卑しい人々は、さまざまな生存への渇愛から離れられず、死の門で泣き叫ぶ。
対応する本文へ 見よ、わがものとしたものの中で震えている人々を。水の少ない涸れた流れの中の魚のように。これを見て、我執なく、生存に執着せずに世を歩め。
対応する本文へ 両極端への欲を取り除け。接触を知り尽くし、貪りのない者となって。自分を責めることになる行いをしない賢者は、見たもの聞いたものに汚されない。
対応する本文へ 表象を知り尽くして激流を渡れ。所有物に汚されない聖者となって。貪りの矢を引き抜き、怠らずに歩む人は、この世もあの世も願い求めない。
収録した訳と出典
日本語訳:関西パーリ語実習会(2023年公開版)。公開元:SuttaCentral。全5章・70経と序・結び、巻末の21詩を収録版の73単位で掲載。
訳文の文字・補足を保ち、ふりがなをこの杜が読書の補助として添えています。この杜による要点は、訳文と分けて掲載しています。